認知症の裁判例に見る認知症対策と相続のポイント3つのケース

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認知症の裁判例に見る認知症対策と相続のポイント3つのケース

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認知症は2012年には全国に約462万人と言われており、2025年には700万人を超えると言われています。認知症は近年増加しており、大きな社会問題となっています。

認知症になると記憶障害や判断力の低下をもたらします。これらの能力は相続でも必要とされますので、認知症になると通常の相続とは異なる注意が必要です。

相認知症になると、判断能力の低下からトラブルに巻き込まれやすくなります。被相続人が認知症である場合は死亡後に遺言書の効力をめぐって争われます。また、相続人が認知症である場合の問題もあります。さらに、自分自身が将来認知症になったときに備える(=認知症対策)必要もあります。

この記事では、①被相続人が認知症であった場合、②相続人が認知症である場合、③将来認知症になったときに備える場合の3つのケースについて裁判例を踏まえた認知症対策を説明します。

1. 被相続人が認知症であった場合

認知症が問題となるのは、被相続人が認知症である時に書いた遺言書の効力です。認知症によって判断能力が低下したままで遺言書を書いたり、他の相続人が認知症による判断能力の低下につけこんで自己に有利な遺言書を書かせるようなことがあるからです。

1.-(1)     遺言書には遺言能力が必要

遺言書は自己の最後の意思を伝えるものですから、遺言書を作成するには遺言能力が必要とされています。

遺言能力とは、遺言者が遺言事項の意味内容や当該遺言をすることの意義を理解して遺言意思を形成する能力のことです。つまり、被相続人が、遺言書を書くことによって、自分の相続財産が誰にどう承継されるかを理解した上で、遺言書を書こうと考えることができるということです。遺言能力がないと有効な遺言とは認められません。認知症の被相続人が遺言書を作成しても、認知症の程度によっては遺言能力を否定されることがあります。

なお、15歳以上でないと遺言書を作成できないという規定もあります(民法961条)。

1.-(2)     遺言能力の有無

遺言能力があるか、遺言書が有効であるかは遺言無効確認訴訟において裁判所が判断します。認知症もその症例や程度は様々であり、認知症だから絶対に遺言能力が否定されるというものではありません。

裁判所は、認知症か否かだけでなく様々な事項を総合的に考慮して判断しています。裁判所が考慮する要素としては、①被相続人の遺言作成時の精神状態、認知症による精神障害の有無やその内容及び程度、②遺言自体の内容や形態、③その他、遺言作成に至る動機、日常の言動や周囲との交渉力、相続人との関係性等があります。また、これらの要素を証明するものとして、診断書等の医療記録、認知症の検査結果(長谷川式など)、担当医師の供述、被相続人の日記や生活状況等が参考になります。

1.-(3)     遺言能力に関する裁判例

被相続人が認知症であった場合、裁判例がどのように遺言能力を判断しているか具体例を見てみます。

東京地裁平成27年3月25日判決の事案は、相続人ABCのうちのAを排除して、全財産をBに相続させる旨の内容の遺言書を認知症であった被相続人が書いた事案です。この場合、遺言作成時に被相続人は認知症であったものの、病状が自分の身の回りのことをできる程度でした。また、従前の関係性から被相続人がBを相続から排除したいと考えることが合理的でした。裁判所はこれらの事情を考慮して、被相続人は認知症でしたが被相続人の遺言能力を肯定して当該遺言を有効と判断しました。

他方で、東京地裁平成28年1月29日判決の事案では認知症の被相続人が書いた遺言書が無効と判断されました。裁判所は、認知症の被相続人が遺言書を作成したのは、重度の認知症の被相続人を二男が連れ出して作成したという経緯があったため、遺言書の内容に二男の意図が反映されていると判断して遺言書を無効としました。この事案では認知症の被相続人が作成した遺言書は公正証書遺言でしたが、遺言書は無効とされました。一般に公正証書遺言は、公証人が作成するため、自筆証書遺言よりも遺言能力が肯定されやすいと考えられますが絶対に有効になるわけではありません。

1.-(4)     認知症と遺言書の効力

以上の他、遺言能力があっても、「不動産は妻に、○○銀行の預金は長男に、××銀行の預金は長女と次女それぞれに各2分の1を相続させる」というように遺言書の内容が複雑な場合、日常の理解力や交渉力と比べて複雑な内容の遺言書を作成することが不自然な場合には、遺言書の効力が否定されることもあります。

被相続人が不利な遺言書を作成していた場合、認知症であったか日常の言動から意思能力が疑わしかった場合には、一度弁護士に相談されるとよいかと思います。

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2. 相続人に認知症の方がいる場合

相続人に認知症の方がいる場合は特別の配慮が必要です。相続人の認知症がとくに問題となるのは遺産分割協議の場面です。被相続人が遺言書を残しておらず、相続人間で遺産分割協議を行う場合、相続人全員の合意が必要となるため、認知症の相続人に合意能力があるかが問題となります。

2.-(1)     遺産分割協議には意思能力が必要

この点に関しては、認知症の相続人に意思能力があるかが問題となります。遺産分割協議について有効な合意を行うためには意思能力が必要となります。被相続人が認知症の場合は遺言能力でしたが、相続人が認知症の場合は意思能力が問題となります。

意思能力とは、自らの行為の結果を判断できる能力のことをいいます。認知症のため意思能力のない相続人がした遺産分割協議の合意は、認知症の相続人が合意の結果を十分に理解していないため、本人の利益が保護されません。

このため、認知症の相続人が意思無能力と判断されると、認知症の相続人が遺産分割協議に同意したとしても、その同意は無効とされます。

2.-(2)     認知症の相続人を排除したり、代理してはダメ

認知症によって相続人が意思無能力となった場合、遺産分割協議から認知症の相続人を排除したり、他の相続人が代理をしたりすることはできません。

例えば、認知症の母親を日ごろから介護している方がその意思を代弁しても、母親を除外することはできません。なぜなら、遺産分割協議の成立には相続人全員の合意が必要となるところ、認知症の母親は意思無能力であるため合意することができず、これは代理人が居ても同じだからです。この点に関しては、『遺産分割協議について知っておくべき29項目』の記事をご参考下さい。

また、あなたが相続人である場合、母親を代理することには利益相反の問題もあります。他の相続人は遺産分割協議に対して利益相反関係を有するため、必ずしも母親の利益を第一に考えるとはいえないとみられるのです。

2.-(3)     認知症の相続人がいる場合の後見制度活用

そこで、認知症の相続人がいて意思能力を欠く場合には、後見制度を利用することが考えられます。

①成年後見制度

まず、認知症によって相続人に意思能力がないとされる可能性がある場合、成年後見制度を利用することができます。

成年後見制度とは、意思能力や判断能力が低下した方を保護するための制度です。法定後見制度には、後見、保佐、補助3つの種類があり、家庭裁判所に申立てをして審判によって認められます。後見人を誰にするかという点について、親族を後見人にしたいとの希望をいうことはできますが、裁判所が後見の仕事内容が複雑だと判断した場合には、弁護士等の専門家が後見人となります。

以下、それぞれの後見内容について記します。

(i) 後見

・要件

判断能力が欠けていることが通常の状態であると認められる場合であること

本人又は配偶者、4親等内の親族からの請求

・内容

本人を代理して契約等の法律行為をし、又は本人による不利益な法律行為を取り消す。

同意権はないが、追認権、取消権がある。

(ii) 保佐

・要件

判断能力が著しく不十分な場合

・内容

当然には代理権はなく、特定の行為について代理権を付与する旨の審判が必要

民法13条所定の行為(借金、保証、不動産売買、相続の承認・放棄・遺産分割等)には同意が必要

取消権、追認権がある

(iii) 補助

・要件

判断能力が不十分な方

本人以外の者による審判の申立ての場合、本人の同意が必要

・内容

代理権、同意権は付与する旨の審判が必要

追認権、取消権がある。

② 他の相続人が後見人となる場合の注意点

他の相続人が認知症の相続人の後見人となった場合は利益相反関係に気を付けなければなりません。後見人となる他の相続人は、認知症である相続人の保護を図るべき後見人としての地位と自身の相続人としての地位を有することになります。このような後見人は、利益相反関係があり認知症である本人の利益を十分に図ることが期待できません。そのため、認知症である相続人との遺産分割協議を後見することができず、次の方法による必要があります。

ア 利益相反関係を解消する。

後見人が自身の相続を放棄すると、相続人ではなくなるため、本人の利益と対立することはありません。相続放棄をするには別途手続きが必要となりますが、相続放棄に関して別記事をご参考下さい。。

イ 後見監督人を選任する。

後見監督人は、家庭裁判所が必要と認めるとき、後見人の請求又は職権によって、選任されます。後見監督人は、後見人と認知症の本人の利益が相反する場合に、認知症の本人を代表することができますから、後見監督人が協議に参加して合意を成立させることができます。

ウ 特別代理人を選任する。

後見監督人が予め選任されていない場合、後見人となった他の相続人は家庭裁判所に、特別代理人選任の申立てをする必要があります。特別代理人選任の申立てに関してはいくつか裁判例があります。

東京地裁平成25年7月11日判決の事案は、利益相反関係を理由として被保佐人による遺産分割協議の取消しが認められたものです。被保佐人と保佐人が利益相反関係にある場合、臨時保佐人選任の申立てを家庭裁判所に申し立てなければなりません。しかし、この事案では、臨時保佐人の選任がなされていなかったことから被保佐人は遺産分割協議を取り消すことができるとされました。

また、東京地裁平成16年12月9日判決は、母親が複数の未成年の子どもの法定代理人として成立させた遺産分割協議は利益相反行為であり特別代理人を選任するべきであるから無効としました。認知症の事案ではありませんが、未成年者は認知症の被成年後見人と同様に保護されています。母親が複数の未成年の子どもの法定代理人として遺産分割協議を行うと、一方の子どもの利益であるものの、他方の子どもの不利益になる行為を行いかねません。そこで、母親が複数の未成年の子どもの法定代理人として遺産分割協議を成立させると利益相反関係が生じることから無効と判断したものです。

2.‐(4)相続人が認知症の場合における遺留分減殺請求の時効

なお、遺言書で他の相続人が相続財産を全部取得した場合のように自己の遺留分が侵害されている場合、相続開始を知ってから1年間に限り遺留分減殺請求を行うことができます。しかし、相続開始を知った時に相続人が既に認知症になっていた場合、遺留分減殺請求権の行使について適切な判断ができないことがあります。

しかし、最高裁平成26年3月14日判決は、遺留分減殺請求の時効期間満了前の6カ月以内の間に認知症である相続人に法定代理人がいない場合、遺留分減殺請求の時効期間が満了する前に後見開始審判の申立てを行ったときは、後見人が就職してから6か月の間は遺留分減殺請求権の時効は完成しないと判断しています。

従って、相続人が認知症であるために遺留分減殺請求権を行使できないまま1年を経過した場合でも、遺留分減殺請求権の時効が完成していない場合があるのでご留意下さい。なお、遺留分減殺請求に関しては、『遺留分減殺請求を確実に成功させるたった1つのポイント』の記事もご参考下さい。

3.将来の認知症対策

ご両親や配偶者が認知症になった場合は財産管理について問題が生じます。予め行う認知症対策としては任意後見制度や信託制度の活用があります。また、認知症になった後は成年後見制度を活用することになります。

3.-(1)     認知症対策①:家族信託

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家族信託とは、認知症対策のために自分の財産を信頼できる家族に預ける制度です。

成年後見制度は、家庭裁判所への報告義務を負担しなければならないことや相続税対策が困難であるというデメリットがあります。また、任意後見契約は本人が認知症にならないと後見が開始されないというデメリットがあります。

家族信託は、任意後見契約に代わって、または併用してより充実した認知症対策を行うことができます。家族信託の手続きに関しては、『家族信託手続き具体的な5つのSTEP』の記事もご参考下さい。

①家族信託のメリット

家族信託の最大のメリットは高額な費用が発生しないことです。家族信託は信頼できる家族に財産管理を任せるので、後見人等に高額な報酬を支払う必要がありませんので、資産家ではない一般家庭が気軽に取り組める制度です。家族信託の費用に関しては『家族信託費用 5つの注意点』もご参照下さい。

なお、家族信託は相続税対策として有効活用するのは難しいです。しかし、相続に関する不動産登記の観点からは、信託登記の登録免許税は所有権移転の5分の1程度であり、その後、受益者が移転しても1つの不動産当たり1000円とされており、この点で費用が抑えられます。

また、相続対策としては、遺言書を利用するよりも家族信託では柔軟な内容を実現できます。例えば、遺言書では承継順位の指定や二次相続対策はできません。しかし、家族信託では次の受益者を指定することなども可能です(受益者連続の信託)。また、遺言書の補完機能として、例えば、息子が相続財産を一括して相続するとすぐに浪費するおそれがある場合、現金を一括相続させずに、月々5万円を払うように設定したり、孫の教育費に用途を定めたりすることができます。

家族信託は、本人が認知症になる前から財産管理・運用を任せることができます。例えば、ご両親が管理していた不動産について、ご両親が元気なうちから信託を原因として子どもに不動産の名義を変更して、子どもがご両親のために財産の管理・運用をすることができます。ご両親が元気なうちに財産管理を子どもに任せることで、子どもの財産管理が適切かをご両親が監督することができます。任意後見においては任意後見監督人が選任されるまで、誰も後見人を監督していない空白の時期があるのに対して、家族信託では本人が元気なうちから親族の財産管理を直接監督することで、この空白期間を減らすことが可能です。

家族信託は、事業承継の場面でも活用できます。例えば、委託者と受託者を本人、受益者を相続人として自己信託をすることで、贈与税を抑えた上で従前通り議決権を行使することも考えられ、事業承継の面で活用できます。また、本人の名義から受託者の名義に変更するため、委託者の倒産による影響から財産を守る機能(倒産隔離機能)があります。

②家族信託のデメリット

家族信託は、後見制度と異なって本人の身上監護権限がありません。家族信託契約の内容に身上監護を規定することはできますが、本人名義で契約する又は手続きをする必要がある場合は、成年後見人でなければできないこともあります。

また、家族信託は、信頼できる家族に財産を信託して名義を変更するため、誰を受託者とするかによっては他の家族が不満に思うことが考えられます。

最後に、家族信託を行うことも遺留分減殺請求の対象となるかですが、肯定説と否定説が対立しています。この点に関してはは判例の積み重ねを待つしかありません。

3.-(2)     認知症対策②:任後後見制度

①認知症対策のための任意後見制度とは

任意後見制度とは、予め公正証書で締結した任意後見契約に従って、本人が認知症になって判断能力が不十分になったときに、任意後見人が本人を援助する制度です。認知症になって自己の判断能力に不安が生じた場合に備えて、あらかじめ任意後見契約を締結しておくのです。

任意後見人制度は、任意後見契約を締結しますから、意思能力があることが前提となります。この点に関して、東京地裁平成18年7月6日判決は、任意後見契約を締結した後、本人が解除して別の任意後見契約を締結した事案において、先行する任い後見契約の解除時及び後行する任意後見契約締結時において本人に意思能力がなかったことを理由としてこれを無効と判断しています。

認知症になって意思能力のない場合は利用できません。しかし、きませんが、意思能力の衰えがみられ始めて、近い将来に認知症のおそれがある場合には有効です。

②任意後見制度のメリット

任意後見制度のメリットは、本人が自由に信頼できる人を任意後見人に選任できること、その契約内容も本人が決めることができることです。また、任意後見契約は、公正証書により作成され、その契約内容が登記されますから、公的にその地位が証明されます。また、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して監督するため、後見人が適正に業務することをある程度チェックできます。

③任意後見制度のデメリット

任意後見制度のデメリットは、認知症対策にはなるものの、死後の処理を委任できないことです。

また、法定後見人と異なって、認知症を発症した本人が自分で不利益な契約を締結しても、任意後見人は契約を取り消すことはできません。

は、認知症による判断力の低下をいいことに任意後見契約の内容を自己の有利なものにしたり、本人が認知症になって任意後見監督人を選任する必要があるのに、選任しないことも考えられますから、信頼できる人物を選任する必要があります。

3.-(3)     認知症対策③:成年後見制度

ご両親や配偶者が既に認知症を発症しており意思能力を欠く場合は、法定後見制度を利用することになります。法定後見制度の概要は前述したので、ここでは法定後見人を活用するメリット・デメリットを解説します。

①法定後見制度のメリット

法定後見制度のメリットは、認知症になった本人の財産が確実に保護される点です。法定後見人は、重要な財産的行為について、代理権・同意見、取消権がありますか。従って、認知症になった本人が自分で不利益な取引を行ったとしても、本人を守ることができます。また、後見人によって身上監護(実際の介護ではなく、ホームヘルパーの手配など)がなされますし、これらの業務が家庭裁判所によってチェックされます。

②法定後見制度のデメリット

デメリットは、法定後見人は本人の財産を保護することを目的とします。このため、相続税対策の関係では必ずしも本人やご家族の意向に沿うとは限りません。例えば、相続税対策としての生前贈与は本人の財産を減らす行為にあたるので認められません。また、後見人が本人と養子縁組を組むこともできません。

なお、法定後見制度は一度申立てを行うと、原則として本人が死亡するまで続きます。法定後見人は家庭裁判所から身上監護についてチェックを受けますが、家庭裁判所のチェックを受けて書類を提出する事務作業は煩雑です。しかし、裁判所のチェックも万能ではなく、業務上横領という重大犯罪が行われる可能性もあります。事務作業の煩雑さや、法定後見人制度への報酬が必要であることから、法定後見制度を利用することはあまりお勧めしておりません。

なお、法定後見人の横領に関して興味深い裁判例が存在します。最高裁平成24年10月9日決定は、養父である成年後見人による業務上横領罪の成否について、親族相盗例(刑法257条)は適用されないと判断しました。家族間の横領は、「法は家庭に入らず」という趣旨から、横領の事実が認められても親族相盗例が適用されて処罰されないのが原則です。しかし、最高裁は、成年後見人は成年後見という地位を有するため親族相盗例が適用されないと判断したのです。

③後見制度支援信託

なお、法定後見制度に関して、後見制度支援信託があります。後見制度支援信託は、認知症になった被後見人の財産のうち、日常生活で必要となる金銭については親族の後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。信託財産の払い戻しや解約にはあらかじめ家庭裁判所の発行する指示書が必要となります。

後見制度支援信託は、後見人が被後見人が認知症等で判断能力が低下しているのを利用して、財産の使い込みを防止する目的で設立されたもので、被後見人に一定額の預貯金(目安500万円以上)がある場合に検討されます。最高裁判所は、後見制度支援信託の活用を推進しているようです。

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④認知症の場合に成年後見制度が必要か

認知症になった場合、必ず成年後見制度を利用しなければならないと思っている方がいます。しかし、後見制度を利用しなければならないのは、認知症を発症しており「意思能力を欠く場合」です。

単に認知症を発症しているだけで、意思能力がある場合には家族信託や任意後見制度を利用できる場合があります。手続きの柔軟性から家族信託や任意後見制度の方が便利な場合もあります。認知症だから必ず成年後見制度を利用しなくても良いことは是非覚えて下さい。

但し、意思能力があるか否かを判断することは難しいですし、認知症が発症している場合に意思能力があることを前提に家族信託や任意後見制度を利用するとトラブルが生じることもあります。認知症と意思能力の関係については個別具体的な事例によりますので、専門家にご相談されることをお勧めします。

4. まとめ

以上から、相続の場面における認知症は、それぞれの場面で異なる対応が必要となります。このような場面に直面した場合には、一度弁護士に相談されるとよいかと思います。

最後に、重要な点をまとめておきます。

・被相続人が認知症の場合、遺言書が無効になることがある

・遺言能力の否定は、遺言者の病状、日常的言動、相続人との関係等が総合考慮される

・相続人が認知症で意思能力がない場合、遺産分割協議には法定後見制度を利用する

・利益相反関係にご注意

・将来の認知症対策には、家族信託が有益

認知症は、病状が様々で意思能力の判断が難しく、また家族信託や後見制度は複雑な面があります。安易に遺言書を作成したり相続手続きを進めたりして問題を深刻化させる前に、相続のプロである弁護士に相談されるとよいと思います。

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