坂尾陽弁護士がテレビ朝日「アップデート大学」に出演しました

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坂尾陽弁護士がテレビ朝日「アップデート大学」に出演しました

振込め詐欺の犯人の顔写真をインターネット上で公開することに関して、坂尾陽弁護士が平成29年4月19日に放送されたテレビ朝日「アップデート大学」に出演し、コメントしました。

1. 犯人の顔写真公開の背景

窃盗等の犯人の顔写真を公開することについては、近年、漫画や関連グッズ等の中古品を販売するお店が、ブリキ製フィギュアの万引き犯の監視カメラ画像を公開すると警告文を掲載したことがきっかけで社会的な議論を呼びました。

当該事件では、公開された画像は顔の部分にモザイクがかかったものであり、フィギュアを返却しなければモザイクを外して公開するとの警告文を掲載しましたが、最終的には警察の要請を受けてモザイクを外した顔写真の公開には至りませんでした。

インターネット上で犯罪行為の犯人の顔写真を公開することは賛否両論がありますが、お店側がかかる行為を行おうとした背景には深刻な犯罪被害があります。

例えば、警察庁の犯罪統計資料によれば、万引きの認知件数は約12万件程度、検挙率は約70%程度となっています。しかし、あくまで警察が認知した件数であり、被害に遭った店舗では警察の取調べの手間等を嫌って通報しないことも考えられ、実際の被害はより多いことは容易に想像できます。NPO法人の全国万引犯罪防止機構の統計によれば、推定万引き被害額は約837億にもなるとも推定されています。

また、振込め詐欺被害等の特殊詐欺については、警察庁の犯罪統計資料によれば、認知件数は約1万4000件程度であり、被害額は約400億円程度とこれも深刻な被害が生じております。

2. 社会的な議論の状況

上記のような深刻な犯罪被害が生じていることを背景として、犯人の顔写真公開については、Yahoo!のアンケートによれば、「やりすぎだと思う」との意見が約6%程度に対し、「妥当だと思う」との意見は約90%と大きく上回っております。

被害回復のために顔写真公開することは、深刻な犯罪被害を前提として被害者の心情としては理解できるものであり、社会的な議論としてもこれを許容する方向の意見もあるところかと思います。

3. 法的な問題点

しかし、犯人の顔写真を公開することは犯罪行為に該当するリスクもあり、法的には問題点もあります。

3.-(1)     名誉毀損罪等の該当性

もっとも問題となるのは名誉毀損罪であり、犯罪行為の犯人の顔写真を公開することは名誉毀損罪が成立する可能性があります。犯罪行為の犯人とは言えども名誉は保護され、犯罪行為の犯人だと摘示されると社会的評価が低下します。また、たとえ犯人であることが真実であるとしても名誉毀損罪に該当する可能性があり、名誉毀損罪が成立しないためには、①公共の利害に関する事実であること、②専ら公益目的であること、③摘示した事実が真実であることの証明が必要とされています。犯罪行為に関する事実は公共の利害に関する事実とみなすとされ、また、本当に犯人であれば、①③の要件は充たしますが、被害回復を主たる目的であれば③の要件を充たさず、名誉毀損罪が成立するリスクはあります。

また、被害回復をしないと顔写真を公開する等と警告した場合、名誉を害すると脅迫して犯人を畏怖させて財物を交付させたとして恐喝罪に該当する可能性もあります。被害回復は当然の権利だと思われるかもしれませんが、判例では権利の範囲内であっても、その方法が社会通念上認一般に容すべき範囲又は程度を逸脱するときは恐喝罪が成立するとしています。

従って、賛否両論あるところではありますが、犯罪行為に該当する可能性がある以上、犯人の顔写真公開は弁護士としては一概に良いとは言えません。

3.-(2)     現実の対応

他方で、犯罪行為の被害者が加害者の名誉を毀損した場合、名誉毀損罪や恐喝罪等が理論的に成立し得るかとは別に、現実に警察がどのような対応をするのかという問題が生じます。窃盗罪や詐欺罪等の犯人が、被害者を名誉毀損罪で告訴したとして、逮捕・起訴に至る事案がどの程度あるのかはやや疑問があるところではあります。

もっとも、現時点では現実的な対応がなされないとしても、犯人の顔写真公開の事案等が広く行われるようになった場合に、将来的に厳しい対応がなされる可能性は否定できないところではあります。

例えば、熊本地震発生直後にライオンが逃げたとツイートした男性が逮捕されたという報道がありましたが、これも数年前はインターネット上のデマで逮捕されるとは思われていなかったところ、インターネットの発展や影響力の増大に伴って警察が厳しく対応したのではないかと思われます。

4. 結論

以上のとおり、犯人の顔写真公開については、被害者の心情等は理解できるところではありまた社会的にも賛否両論の様々な意見があるところではあります。しかし、弁護士としての立場からは、現時点では犯罪行為に該当する可能性があるため、一概に良いとは言えないという意見になラざるを得ないところかと思います。

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