不動産相続の全知識:分け方や必要な手続き・書類・費用を徹底解説

不動産を相続することになり何をして良いか不安や悩みはありませんか? 遺産相続において不動産は預貯金に比べて分け方が難しく、様々な手続きや費用が必要になります。
この記事では不動産の相続について、遺産分割の方法や必要な手続き・必要書類・費用などを相続弁護士が解説します。

注意

この記事では不動産相続の必要知識を網羅的に解説しています。順番にお読みいただくことで、不動産相続の流れに沿って理解が進むようになっていますので、是非最後まで順番にお読みください。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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不動産相続の流れ

遺産相続問題では時系列に沿って様々な手続きが必要です。とくに不動産相続の手続きを自分でやろうと思っているときは、動産相続の流れ中で、どこまでは自分でできるか、どのような場合は自分では難しいかを知る必要があります。

 

STEP.1
相続調査を行う

相続人・相続財産の調査を行います。不動産相続に限らず相続手続きでは必要になります。詳しくは下記記事をご覧ください。
(参考)相続調査とは?相続人調査と相続財産調査に分けて何を行うかやメリットを相続弁護士が解説

STEP.2

不動産相続のうち相続人が複数であるときは、遺産分割における不動産の扱いが問題になります。どのように不動産の遺産分割方法が問題になります。

STEP.3
相続した不動産の相続登記

誰がどのように不動産を相続するか決まったら名義変更を行います。

STEP.4
相続税の申告・納付

相続財産に不動産があるときは相続税の申告・納付が必要になることが多いです。相続した不動産をどのように評価するかが問題になります。

この記事では不動産相続における流れを意識して、順番に解説します。また、不動産と言っても土地・建物・マンションなどの不動産の種類ごとに注意すべきポイントは違います。相続不動産に共通する問題について説明した上で、最後に土地・建物・マンションの違いを解説します。

 

遺産分割における不動産の扱い

土地・建物などの不動産は現預金と違って柔軟に分けることができません。そこで遺言書が残されていない不動産相続においては、不動産をどのように分けるかという遺産分割の方法が問題になります。

MEMO

不動産相続における遺産分割の問題は、遺言書がない場合で、複数の相続人がいるときに生じる問題です。遺言書があるときや、あなただけが相続人であれば、この点は読み飛ばしていただいて構いません。

 

遺産分割方法の種類について

遺産分割の方法には現物分割、換価分割、代償分割、共有分割があります。ここでは遺産分割の方法には様々な種類があることを前提として、相続不動産に特有の問題を解説します。

なお、遺産分割方法について詳しくは下記記事をご覧ください。
(参考)遺産分割の方法-主要3種類の方法と注意点を相続弁護士が解説

 

遺産分割で不動産が問題になるのは簡単に分配ができないことと、算定方法で不動産の評価額が異なるため、不動産の価格を相続人全員が納得することが難しいからです。

それぞれの遺産分割方法に沿って、それぞれどのような特徴があるのかやメリット・デメリットを解説します。

 

不動産の遺産分割方法①:現物分割のメリット・デメリット

 

現物分割とは

現物分割は、相続不動産をそのまま分ける方法です。例えば、相続人が兄弟2人の場合、土地を分筆して兄と弟を相続するような場合です。この方法は、最もシンプルで、また分割した土地の算定方法によっては節税対策となることもあります。

MEMO

現物分割は相続不動産のうち土地について有効な手段です。もし建物・マンションで悩んでおられるときは次の方法にお進みください。

 

現物分割のメリット

  • 現物分割をすれば相続不動産が誰のものか明確になる
  • 不動産の価格算定が原則として不要になる

 

現物分割のデメリット

  • 相続不動産の分筆の手続費用(測量調査等)が必要
  • 境界線上の建物の扱いが問題になる
  • 土地を分割することで評価額が下がる

 

不動産の遺産分割方法②:換価分割のメリット・デメリット

 

換価分割とは

換価分割は、相続不動産を売却して、売却代金を相続人で分ける方法です。

不動産の名義が被相続人のままでは相続不動産は売却できないため不動産の名義変更をする必要があります。売却までの間、相続人の共有名義とするときと単独名義とするときがあります。

 

換価分割のメリット

  • 相続後すぐに現金を取得できる
  • 現金なので相続人間で公平に分配できる

 

換価分割のデメリット

  • 相続不動産に思い入れがあるor誰かが住んでいるときに使いにくい
  • 不動産の売却益に課税が生じることがある

 

不動産の遺産分割方法③:代償分割のメリット・デメリット

 

代償分割とは

代償分割は、相続不動産を相続人の誰かが取得して、他の相続人に代償金を支払う方法です。

例えば、相続人である姉妹のうち、姉が相続不動産(6000万円)でお店を経営していたような場合を想定します。姉が不動産においてそのままお店を経営したい場合、姉が不動産を相続する代わりに、妹に3000万円を支払うのが代償分割です。
姉は不動産を単独で相続するので従前どおりお店を経営することが可能となり、次女はお金を取得することができます。

 

代償分割のメリット

  • 相続人が相続不動産を利用しているときに手放さずに済む
  • 相続不動産が値下がりしているようなときに売却せずに済む

 

代償分割のデメリット

  • 代償金を用意する負担がある
  • 手続きをしないと代償金の支払いに贈与税が課されるリスクがある

 

代償分割と生命保険の活用

相続前に相続不動産の代償分割を考えているなら、代償金の原資として生命保険の活用が考えられます。保険金は、相続財産ではなく、保険金の受取人が固有に取得する扱いがされています(最高裁昭和40年2月2日判決)。

従って、相続不動産を取得させたい相続人を受取人とする生命保険に加入すれば、被相続人の死亡時に受け取る保険金を代償金の原資とできます。

 

不動産の遺産分割方法④:共有分割はおすすめしない

共有分割であれば相続不動産を手放す必要はありません。また、一見すると、相続人全員が譲り合って使用すれば公平と思えます。しかし、共有分割の方法はおすすめしません。

最初は良くても時間経過により不動産の使い方を巡って揉めるリスクがあります。

また、不動産は共有名義であるため、誰かが不動産を賃貸や売却したいと考えても他の相続人の同意を得る必要があります。

このため、一定期間は不動産を共有としておくとしても、どこかの段階で相続不動産を分割するか又は処分することをお勧めします。

 

相続不動産を巡ってもめた時

遺産分割において不動産はどのように処理するかを巡ってもめやすいと言えます。相続人の誰かが住んでいるときは生活保障を考える必要がありますし、先祖伝来の土地建物や実家は思い入れがあり売却が難しいです。

他方で、相続不動産を売却しない現物分割・代償分割だとどのように相続不動産を評価するかで相続人間の意見が割れるときがあります。遺産分割の手続きや揉めたときの対処方法については下記記事をご覧ください。

(参考)遺産分割の手続きで損をしないための進め方と知っておくべきポイント

相続した不動産の登記手続き

相続不動産の分配方法が決まったら、次に必要なのが相続不動産の登記手続きです。換価分割のときは買主側が手続きを行いますが、現物分割・代償分割のときは自分で相続手続きの対応を行う必要があります。

 

不動産の相続登記の必要書類を取得する

相続登記の手続きではきちんと必要書類を揃えることが非常に重要です。具体的には以下のような書類が必要になります。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 相続不動産の固定資産税評価証明書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書など

 

法務局に相続不動産の登記変更申請

相続不動産の登記変更について期限はありません。しかし、相続登記を未登記のままにしておくと時間経過により疎遠になったり、行方不明になったりする人が出てしまいます。そのため原則として相続発生後にできるだけ早く申請を行いましょう。

注意

相続登記をしておかないと、いざというときに相続不動産の処分ができません。そこから慌てて相続登記をしようとしても、名義人の相続が起きており権利関係が複雑化することがあります。相続・不動産を扱う弁護士の相談にも多いのですが、そこから対策を行うと時間・手間・費用がかかります。相続直後にめんどくさがらずにきちんと手続きをすることをおすすめします。

相続登記の必要書類が集まったら申請書を作成して法務局に提出します。相続登記の申請については法務局のホームページをご覧ください。

(参考)不動産登記の申請書様式について

司法書士に依頼をおすすめします

相続登記を自分でやることは不可能ではないですが、非常に大変です。相続財産が不動産だけで相続税を支払うとお金がなくて困っているようなケースを除いて、基本的には司法書士に依頼することをおすすめします。生前の相続対策では、このような専門家費用も現預金として残す工夫をしたいところです。

 

相続不動産に関する課税関係について(相続税の申告・納付など)

 

相続税の申告・納付が必要になるケース

相続不動産が一定金額以上のときは相続税の申告・納付が必要になることがあります。具体的には、相続税は「基礎控除」を超えるときに課税が生じる可能性があります。

基礎控除の金額=3000万円+600万円×法定相続人数

仮に相続不動産が1億円と評価されるとして、相続人が4人だったときは1億円-5400万円(基礎控除の金額:3000万円+600万円×4人)=4600万円に相続税が課されるのが原則ということになります。
相続税の計算方法や申告・納付の手続きについては国税庁のホームページをご覧ください。

(参考)相続税|国税庁

 

不動産相続における節税方法

相続税については頻繁に税制改正が行われていますし、様々なケースで租税負担を軽くするための特例が用意されています。そのため、上手く特例を活用することによって、不動産相続における節税ができる場合があります。具体的には以下のような制度は適用できることが多いです。

  • 相続税の節税:小規模宅地等の特例
  • 生前の対策:おしどり贈与制度
  • 売却時の節税:取得費加算の特例
  • 空き家の相続:空き家特例の活用

このうち小規模宅地等の特例は相続する土地の評価金額を下げるものであり、事案にもよりますが大幅な節税が期待できます。この特例は、被相続人が住んでいた実家、事業用の土地、アパート賃貸業用の賃貸住宅などで適用できる可能性があります。

それぞれ50%~80%の評価額の減額ができることがあるため活用しないと相続税を節税できずに大きな損をする可能性があります。
相続不動産が高額であるときは相続に強い税理士に相談することをおすすめします。

必ず税理士にご相談ください

相続不動産が基礎控除を超えそうなときは必ず相続に強い税理士に一度はご相談することをおすすめします。相続発生後の相談は無料で対応している税理士も多いです。相続税は複雑で特例も数多く存在しますし、毎年のように税制改正が行われます。インターネットで調べても情報が古い可能性があるので、必ず一度は税理士にご相談ください。

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相続不動産をどのように評価するか

現預金や株式と異なり相続不動産をどのように評価するかは問題があります。換価分割を選択するときは客観的な相続不動産の金額が分かります。しかし、とくに代償分割では、相続不動産を取得する相続人と代償金を貰う相続人の間で相続不動産がどのぐらいの価値があるかを巡ってもめることが少なくありません。

どのように相続不動産を評価するかは色々な考え方があるので簡単にご紹介します。

評価方法の必要な場面の違い

相続不動産の評価方法は「何のために評価するのか」という評価が必要な場面で違います。同じ不動産について、遺産分割時の評価金額と相続税の申告・納付における評価金額が違うことがあるのでご注意ください。

遺産分割・遺留分侵害請求における不動産の評価方法

遺産分割や遺留分侵害請求において、相続不動産は実勢価格(時価)で評価されます。つまり、現在、第三者に売却しときの価格を様々な事情を考慮して推測します。

評価方法 具体的な内容
公示価格 公示価格は、国土交通省が示す土地の価格で実勢価格のおよそ90%といわれています。
固定資産税評価額 固定資産税評価額は、市町村が示す不動産の価格で固定資産税算定の基礎とされています。実勢価格のおよそ60~70%にあたります。

 

路線価格(相続税評価額) 路線価は、毎年国税庁が発表する路線価方式(又は倍率方式)という方法で評価します。路線価は実勢価格のおよそ70~80%になります。

 

実勢価格(時価) 取引価格又は時価と呼ばれるものです。相続によって取得した不動産を売却した場合の金額です。現物分割・代償分割では不動産を売却しないため本当の実勢価格は分からないことから上記の各価格から推測します。

相続不動産の評価は必要に応じて不動産鑑定士に依頼することも考えられます。遺産分割において相続人間で意見が分かれるケースでは、まずは相続に強い弁護士に相談してください。弁護士が不動産鑑定士の判断をおすすめされたときは、相続に強い不動産鑑定士に繋いで貰えるでしょう。相続に強い弁護士の相談の流れや注意点、選び方は下記記事を参考にしてください。
(参考)相続に強い弁護士に無料相談するなら

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相続税の算出における不動産の評価方法

これに対し、相続税の算出時に使う不動産の評価方法については国税庁のホームページ等で明確に定められています。原則的な評価方法に加えて、小規模宅地等の特例などが適用されて最終的な評価方法が決まることになります。

  • 土地:路線価方式or倍率方式
  • 住宅:固定資産税評価額

詳細については国税庁のホームページを参考にしてください。
(参考)土地家屋の評価|国税庁

 

まとめ:相続不動産は慎重な対応が必要

この記事では相続不動産があるときに必要な手続きや注意点を解説しました。最後に重要な点をまとめておきます。

  • まずは不動産を相続するときの流れを知る
  • 不動産をどのように分けるかを決める(遺産分割の方法)
  • 不動産の名義変更のために相続登記が必要
  • 基礎控除を超えるときは相続税に注意する
  • 相続不動産をどう評価するかが問題になる
  • 必要に応じて専門家に相談・依頼する

あなたが抱える遺産相続問題について、どのような問題点があるかについては相続に強い弁護士にご相談をおすすめします。まずは弁護士に相談すれば、具体的事情に基づいて相続に強い司法書士・税理士・不動産鑑定士などの専門家にも繋いでもらえます。

遺産(相続財産)に不動産があるときは、この記事で解説した通り様々な問題があるので早めに専門家にご相談ください。

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