遺留分侵害額(減殺)請求に応じないときのたった1つのポイント:拒否する根拠や成功させる方法も解説

遺留分侵害額(減殺)請求をしたのに相手が応じないため困っていませんか?

遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)は、あなたに不利な遺言に対抗するための権利です。
「青天の霹靂」という言葉のとおり遺言書は予想だにしない内容であることも少なくありません。遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)は不条理な遺言内容に対して残された最後の権利です。しっかりと成功させましょう。

この記事では、相手が遺留分侵害額請求に応じないときに、遺留分侵害額請求を成功させるためのたった1つのポイントを解説します。そもそも遺留分侵害額請求は拒否できるのかや、なぜ成功させる方法も解説します。

MEMO

遺留分侵害額請求は2019年の民法改正以前は遺留分減殺請求と呼ばれていました。この記事では遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求の違う点にも言及するときを除き、原則として「遺留分侵害額請求」という用語で説明します。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

相手が遺留分侵害額請求に応じないとき:いますぐ弁護士に依頼する

結論になりますが、遺留分侵害額請求に応じないときの対応方法は今すぐ弁護士に依頼することです。これが遺留分侵害額請求を成功させるためのたった1つのポイントです。

これだけだと拍子抜けに思われるかもしれないので、ここからは「なぜ相手が遺留分侵害額請求に応じないケースでも成功すると言えるか」を詳しく解説します。

注意

この記事では遺留分侵害額請求に相手が応じないため、遺留分を失って損をしないための知識を解説しています。最初から順番に最後までお読みいただくことで、遺留分侵害額請求を成功させる方法が分かります。必ず順番に最後までお読みください。

 

遺留分侵害額請求は成功する!

 

遺留分侵害額請求に応じなければ拒否できるか?

遺言内容があなたにとって不利であるため、遺留分侵害額請求をしたのに相手が応じなかったら不安になるかもしれません。遺言書がある以上は自分は遺留分侵害額請求ができないのではないかと思われるでしょう。

しかし、遺留分侵害額請求は拒否できるものではありません。

遺留分侵害額請求は法律上保障された相続財産を取得すること

そもそも、遺留分侵害額請求は遺産相続で法律上保障されている最低限の遺産(相続財産)を取得することです。遺留分とは相続人が遺言によっても奪われることのない遺産(相続財産)のことです。

本当は遺言書によって遺留分を侵害することはできません。それなのに遺留分を侵害している遺言があるから、その救済手段として遺留分侵害額請求があるのです。

きちんと請求手続きを行う必要がある

しかし、法律上保障された遺留分も待ってるだけで貰えるわけではありません。遺言書が存在するため、あなたが適切な手続きを行わないと遺言書通りに遺産が分配されてしまいます。

法律の格言に「権利の上に眠る者を保護しない」という法律の格言があります。時効制度をご存じだと思いますが、これは権利を適切に使わないと失ってしまうものです。

遺留分侵害額請求権も法律上保障された権利ですが、あなたが適切に請求手続きを行う必要があります。本当は貰えるはずの遺留分も、請求手続きを行わないと失われてしまいます。

 

遺留分侵害額請求の時効期間=1年間

遺留分侵害額請求の時効消滅

遺留分侵害額請求は、遺留分があると知ってから1年間で時効消滅します。一般的には、相続開始とほぼ同時にこれらを知ることになりますし、「知らなかった」ことを立証するのは難しいです。

そのため、原則としてご両親が亡くなってから1年間で遺留分侵害額請求権は時効消滅すると考えるべきです。

注意

遺留分侵害額請求権に相手が応じないうちに時間が経過しても時効は成立します。無視している相手が悪いのに、権利を失うのはひどいと思われるかもしれません。しかし、時効制度はそういうものですのでご注意ください。

1年以内にどこまでの手続きが必要か?

遺留分侵害額請求権は1年間で時効消滅します。しかし、1年間で遺留分侵害額請求の手続きをすべて完了させる必要まではありません。

遺留分侵害額請求権の時効制度は、通常の時効制度と少し異なっており調停や訴訟を起こす必要はないと解されています。通常は、内容証明郵便+配達証明で、遺留分侵害額請求権の行使を証明できるようにして請求手続きを行います。

注意

遺留分侵害額請求権は口頭でも行使できるとされています。しかし、口頭で伝えても、相手が聞いていないと言えば立証は難しく、遺留分侵害額請求権を期限内に行使していないとして時効消滅する可能性があるのでご注意ください。

遺留分侵害額請求の内容証明郵便の書き方

遺留分侵害額請求を内容証明+配達証明で行う場合の書き方ですが、法律上は決まっていません。以下の内容を書くのが一般的ですが、具体的事情により異なるので弁護士に相談した方が良いでしょう。

  • 遺留分侵害額請求を行うこと
  • 被相続人と法定相続人
  • 自己の遺留分の割合
  • 遺言書によって遺留分を侵害されたこと

 

内容証明郵便を送っても遺留分侵害額請求に応じないときの対応方法

 

内容証明郵便による請求にも応じない場合

遺留分侵害額請求の内容証明郵便を出しても、相手が遺留分侵害額請求に応じるとは限りません。むしろ、現実にはのらりくらりと遺留分侵害額請求に応じないケースの方が多いです。

このような場合は遺留分侵害額請求の調停・訴訟を提起しなければなりません。ここで重要なことは、遺留分侵害額請求の調停申立てや訴訟の提起はあなたが行う必要があります。調停・訴訟を自ら行うのが難しければ弁護士に依頼することになります。

遺留分侵害額請求の調停申立て

相手が遺留分侵害額請求に応じないままであれば、まずは家庭裁判所に調停の申立てを行います。調停手続きは、裁判所側の調停委員が中立的な立場から当事者の話し合いをサポートするものです。

しかし、調停は出席しないこともできます。また、調停委員は弁護士がついてる側の意見を尊重する傾向にあります。基本的には調停段階から遺留分侵害額請求に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

遺留分侵害額請求の訴訟提起

調停手続きはあくまで話し合いの手続きであるため、相手方は出席を拒否できますし、遺留分侵害額請求に応じないこともできます。このような場合には遺留分侵害額請求の訴訟を提起することになります。

訴訟手続きは法律で定められた厳格な手続きに従って対応する必要があるため、自分で行うのは困難です。訴訟段階になったら必ず弁護士に依頼するようにしましょう。

MEMO

相手が応じないことが分かってるなら最初から訴訟提起をすれば良いと思われるかもしれません。しかし、遺留分侵害額請求は調停前置主義といって、調停をせずに訴訟提起ができない仕組みです。

 

遺留分侵害額請求に応じない根拠はあるのか?

相手がかたくなに遺留分侵害額請求に応じないと、本当は請求は認められないのではないかと不安になるかもしれません。しかし、繰り返し説明している通り、遺留分侵害額請求は法律上補償された権利です。

相手が以下のとおり応じない理由を色々述べても基本的に根拠はありません。

01 遺言書があるから遺産を貰う権利はない

遺言書の存在・内容を理由として遺留分侵害額請求に応じないと反論されることはあります。しかし、遺留分侵害額請求は、そもそも不当な遺言書により自分の遺留分を侵害されたときの救済手段です。

遺言書の内容よりも遺留分侵害額請求権が優先します。遺言書の存在・内容は遺留分侵害額請求に応じない理由にはなりません。

02 拒否し続けるうちに時効消滅を待つ

相手が法律に詳しければ、遺留分侵害額請求に応じずにいるうちに時効消滅を待っている可能性もあります。しかし、時効消滅はあくまであなたが遺留分侵害額請求をしなかったときです。

相手が拒否していても内容証明郵便を送付して遺留分侵害額請求を行えば時効消滅はしません。そのため、相手が拒否し続けるうちに時効消滅を待つ作戦には根拠がありません。

そもそも遺留分がないケースに注意
  • あなたが被相続人の兄弟姉妹だと遺留分はありません
  • 相続放棄をしたor相続欠格者or相続廃除者だと遺留分はありません

 

遺留分侵害額請求が失敗するたった1つのケースと確実に成功させるポイント

 

実はたった一つだけ失敗するケースが存在する!

遺留分侵害額請求が例外的に失敗する場合

遺留分侵害額請求は確実に成功することを説明してきました。しかし、実は遺留分侵害額請求が例外的に失敗することがあります。

失敗=遺産(相続財産)がなくなった

それは、遺言書に沿って遺産(相続財産)を貰った相続人が相続した財産を処分した又は隠したため財産がなくなった場合です。遺留分は、法律上保障された権利ですが、事実上お金や財産を持っていない人からは回収できません。

遺留分侵害額請求を確実に成功させるには

従って、遺留分侵害額請求を確実に成功させるポイントは、たった1つだけです。それは、相続財産を取得した相続人が、相続した財産をどこかにやる前に今すぐ遺留分侵害額請求の手続きを行うことです。

相続財産の調査+民事保全手続きがベスト

具体的には、遺留分侵害額請求権を保全するために民事保全手続を利用し、相続財産の処分を防止します。もっとも、遺留分侵害額請求権を保全するための民事保全手続を行うためには、どのような相続財産を調査しなければなりません。
(参考)相続財産調査費用の相場と弁護士に依頼する3つのメリット

従って、なるべく早く相続財産調査+民事保全手続を行うことが遺留分侵害額請求を成功させるポイントです。しかし、相続財産調査をするには時間や手間がかかります。

また、調停申立てと異なり、自分で遺留分侵害額請求権を保全するために民事保全手続を行うことは難しいです。

 

そのため、最初の結論どおり、いますぐ弁護士に依頼して相続財産調査と民事保全手続を行うことが遺留分侵害額請求を確実に成功させるためのたった1つのポイントとなるのです。

全部を弁護士に依頼する必要はない

もっとも、遺留分侵害額請求は法律上保障された権利です。あくまで相続財産を処分されることを防ぐことが成功のためのたった一つのポイントです。
相続財産調査と民事保全手続を弁護士に依頼すれば、相続財産の処分等を防止できます。

従って、遺留分侵害額請求手続の全部を弁護士に依頼する必要はありません。しかし、相続財産調査と民事保全手続だけでも今すぐ弁護士に依頼することをおすすめします。

 

まとめ:遺留分侵害額請求を確実に成功させるために…

遺留分侵害額請求に相手が応じないときは、絶対に請求を成功させたいと思うでしょう。遺留分侵害額請求はあなたの最後の武器です。

遺言書によって相続財産を取得できずに悔しい思いをしたなら遺留分侵害額請求を行いましょう。あなたは、この記事を読んで、確実に遺留分侵害額請求を成功できると思います。

 

最後に重要な点をまとめておきます。

  • 遺留分侵害額請求権は法律上保障された必ず貰える権利
  • 適切な手続を行わないと遺留分侵害額請求権も時効消滅する
  • 遺言書よりも遺留分侵害額請求が優先する
  • 相手が相続財産を処分するのがたった1つの失敗ケース
  • 今すぐ弁護士に相続財産調査+民事保全を依頼する

遺留分侵害額請求を行う場合はスピードが重要です。この記事を参考に、相続財産が無くなり遺留分侵害額請求に失敗する事態だけは回避して下さい。

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